who's who/フェルデンクライスを実践するプロフェッショナル/森 由利子 Yuriko Mori

who's who
フェルデンクライスのプライベートレッスンを続けられている、バイオリニスト森由利子さんのお話を伺いました。
Yuriko Mori
森 由利子
バイオリニスト

《インタビュー》
フェルデンクライス・ジャパン代表
かさみ康子

フェルデンクライスを実践する
プロフェッショナル

森 由利子

フェルデンクライス
プラクティショナー

佐野 恵子
吉田 圭佑
和貴子(WAKIKO)
井上 幸子

プラクティショナー養成コース

音楽家のためのフェルデンクライス
音楽家のためのフェルデンクライス

初めてフェルデンクライスのワークショップに参加した時に、あまりに大きな感覚の変化を体験し、「わたし、女優になったの?!」と思ったとおっしゃる森由利子さん。その後ずっとレッスンを続けられ、フェルデンクライスを、バイオリンの演奏だけでなく、人生のさまざまな局面を乗り越えるためのツールのひとつとして、大切にしていらっしゃいます。体の動きが変わり、演奏が変わり、音楽が豊かになるだけでなく、理解力や生き方も良くなっていく、、。「音楽家にはフェルデンクライスが大事!」と熱心に語ります。
(インタビュー:かさみ康子)

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<フェルデンクライスとの出会い>

かさみ康子(以下K):森さんは、初めはワークショップに参加されて、その後ずっと個人レッスンを受けてくださっています。10年前、でしたよね!思い出しても、とても密度の濃いレッスンがたくさんあったし、演奏家に特有の問題への対応など結果も出ていると思います。森さんにとっては、フェルデンクライスを始めてからの年月が、どういうプロセスで、どんな発見や変化があったのでしょうか。

森 由利子(以下M):すごく変わったと思います。レッスンを受け始めた頃は、胸郭出口症候群の症状で悩み、それが原因でオーケストラをやめたほどでしたが、まず、痛みが減り、演奏がしやすくなりました。それだけでなく、上達への道がレッスンによって開かれた気がします。 バイオリンというのは、右手を動かす作業がものすごく繊細で、あちこちの筋肉が微妙にお互いに関係しながら動いていかなければならないということをフェルデンクライスをやって初めて知りました。それをひとつずつ良くして行くと、右手が良くなったら今度は左手。左手は関係ないと思っていたのに、左手にも問題がある。やればやるほど、良くなったと思っても、次の課題が出てくるという感じです。座り方が良くなると、また、次の課題、、、。最近では、手根幹症候群を患いましたが、フェルデンクライスでかなり改善できました。10年以上フェルデンクライスをやっているのに、まだまだ問題があるなあと思いますが、学習は終わりません。

<音楽家とフェルデンクライス>

M:音楽家はもっとフェルデンクライスをやれば良いと思います。日本人は特に、思い込みが強くて、一生懸命頑張ってしまう傾向がありますよね。ヨーロッパ人のほうが、演奏する時に頑張っていないし、きれいに体を使っている人が多いと思います。昔から「頑張る」ことが美点とされている日本人には、不必要な力を使わないというフェルデンクライスの方法が余計に必要なのだと思います。

それに、ヨーロッパ人と日本人では骨格も違います。それぞれ自分の固有の体をみて、骨格に合わせて弾き方を考えることが必要でしょうね。そういう点でも日本は遅れているなと思う。音楽を教える人は、特に若い人を教える人は、もっと体の使い方について根本的なことを教えるべきです。自分のことを振り返っても、こういうことを勉強しないと将来、40代になって筋肉が変わってきたときに故障確率は高いと思います。

<体に聴く、注意を払う>

M:フェルデンクライスやると構造的なことを理解するし、型にはまらない、自分に一番よいポジションを発見する。指を使いながら、手先でない別のところ、例えば股関節や骨盤などにも注意を向けることになります。そういうことを繰り返すことで、こういう時は良い音が出るとか、自分をチェックすることができるようになり、自分の演奏についての理解が深まるんです。

K:注意を払うということも、やればやるほどできるようになりますよね?

M:音を聴くことは音楽家はもちろんやることですけど、音を聴く集中力と、体に聞くという集中力とは、似ています。体がいい状態で良いポジションに整えた時には良い音が出る。スポーツと同じで、良い結果が出る。ピアニストもバイオリニストも、良い音がでるような体にして演奏しなければならない。欲しい音に合わせて体を使う能力が必要です。骨盤とか、肩甲骨とか、全体の感覚を使う弾き方があるべきだと思います。

K:音楽家は感受性が豊かだと思っているけど、体のことは意外に注意を向けていないですね。

M:私がオケにいた頃の自分がそういう状態でしたね。自分では出来ていると思っていたのです。誰にも体のことを言われたことがなかったので。たまに、今はできても年をとったらだんだん筋肉が変わってくるからそういうパワフルな弾き方はできないと言われたことがありましたが、その時は若かったので、何のことかな、という感じでした。

<教育の最初から体に目を向ける>

M:演奏の価値観にも関わってきますね。若いうちから無駄のない弾き方ができていれば、もっと深く音を聞くことができると思います。日本人はテクニックはあるが音の聞き方が足りないと言われることが多い。もっと響きを聞くことが大事だと。自分の体に目を向けるというおとは、結果的に響きを聞くことにつながっていくのではないかと思うのです。

のびる、響く音を出すためには、音を楽に出す体が一番大事だと思う。力で弾く演奏は、若いうちは可能でも、やがてひずみが出てくる。そして40代になって故障し、ようやく気づくことになります。欠陥を発見したりチェックしたり研究することは大人の特権だとは思いますけど、できれば子供の頃から、特に自分で考えることができる高校生、大学生はこれから世界に羽ばたく若い時期に、是非フェルデンクライスに出会ってほしいですね。ピアニストの娘がパリで勉強しているんですけど、すごく体、体、って言われるんですって。君はその音を出す時にこうなっているから、、、。って体のことばかり言われる。そういう注意をする先生は日本のピアノの先生にはいなかったって。 いま娘は23歳だけど、良い時期に考えはじめているなって。半年ごとに帰ってくるんですが、着実に変わっています。ピアノを弾く姿勢が変わって、音に対する意識の高さが高まってきています。

教える場合でも、気づきを与えることは有効ですね。細かいことに興味がある人にはフェルデンクライスは向いていると思うし、だから音楽家に向いていると思います。フェルデンクライスってすごく細かいんです。点と点をひとつひとつ結んで行く感じで、他の物と違う。音楽家は子供のころから細かいことに脳を使ってきているわけだからその回路はあるわけで、ヒントさえもらえば、「そうか」と思うはずだし、どんどん良くなって行くと思う。

K:フェルデンクライスをやって、人間的に変わったとか、何かありますか?

M:体に注意を向けることで、昔よりは少々穏やかになったかなと思います。それと、人と関わる中で、自分と合わない人とでも、その人その人の生き方や考え方を広く捉えることができるようになったと思います。それは、フェルデンクライスで動きの勉強をしている時に、他のやり方はないかと探索する作業からきた変化だと思うんです。このメソッドを発見した方はスゴいと思う。武術とつながっているそうですが、どういう精神状態だと相手を倒せるか、否定するのではなくて受け入れる。そのほうが上手く行くのだなと思う。変わってきた自分が面白い。

K:今後はどういう感じでやって行くか。どういう演奏家になりたいとか。

M:自分が弾いていてストレスのない弾き方、地球に逆らわない弾き方ができるようになりたい。今はまだ、これがどうかと考えて、脳が一カ所ごとにチェックしている状態だけど、体が自然にやってくれるようになれば良いと思う。もう少し、という感じです。

K:ありがとうございます。

(2014.8.10)


【森 由利子 Yuriko Mori】東京都在住。
東京芸術大学付属音楽高等学校を経て、同大学を首席卒業、同大学院修了。日本音楽コンクール入選。イタリア・シエナ音楽祭にて名誉賞受賞。1998年から2003年まで読売日本交響楽団に在籍。


音楽家のためのフェルデンクライス楽器を演奏したり、歌ったり、音楽を専門にしている方に起こりがちな、痛みなどのトラブル。もう少し余計な力をなくして、スムーズに動けば演奏が変わるはず、という確信がありながら、その方法が分からない。プロでも、アマチュアでも、音楽家が探す解決方法がここにあります。

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